疾走レンタルキックスクーター
はじめに
最近、ストックホルム市内で電動キックスクーターをよく見かけるようになりました。日本では電動キックスクーター自体まだあまり聞いたことがない乗り物だと思いますが、ストックホルムでは、市内のちょっとした移動から、観光客の手軽な「足」となりつつあるこの電動キックスクーターについてお伝えします。
電動キックスクーターとは?
百閒は一見に如かず、まずはこちらが電動キックスクーターです。
そう、小学生ぐらいの子供が公園などで遊んでいるキックスクーターの電動版なんです。機種にもよるかと思いますが、走り始めは自分で地面を蹴ってスタートし、アクセルハンドルを回すことにより、時速20キロほどの速さがでます。
前後に車輪が付いており、自転車に乗ることができるのであれば、大概の方が運転することが可能だと思います。
世界で始まるレンタル電動キックスクーター
観光客の手軽な足として
海外ではこの電動キックスクーターをE-Scooterと呼んでおり、Rental(レンタル)もしくはSharing(シェア)という形で事業が展開されています。日本も含めて観光客に対する手軽で環境に優しい移動手段として、レンタルサイクルがあるのはご存知だと思いますが、自転車はどうしても体力を必要とします。特に坂の多い街では、自転車が反対に重荷になってしまうこともあるでしょう。
そこで、2000年頃に主にアメリカで始まったのがセグウェイ(Segway)のレンタルサービスです。しかし、セグウェイに乗られた方、見た方ならお分かりだと思いますが、セグウェイ自体が大きく、そしてバッテリーの性質上長時間の移動ができない、またセグウェイ自体が高額であり、維持に非常にお金がかかるため事業として成立しませんでした。
技術革新によるE-Scooterの誕生
本来、人々に手軽で安い移動手段を提供したかったこの業界では、セグウェイに続く乗り物を試行錯誤してきました。そして、2010年以降にバッテリーの技術革新と低コスト化、そしてスマートフォンと携帯電話網4Gが普及したことにより、現在のE-Scooterを誕生させることとなりました。
バッテリーの低コスト化は移動手段となる電動キックスクーターの価格を押し下げます。そして、スマートフォンと携帯電話網4Gは物理的なお店を持たずに、利用者に対してGPSを用いた電動キックスキーターの位置情報、そして利用料金の徴収も可能としました。
ストックホルムの電動キックスクーター企業とそのサービス内容
サービス展開する企業紹介
ストックホルム市内では、2019年4月1日時点で3社の電動キックスクーターを提供している会社があります。その中でも特によく見かけるVOIとLIMEについて、簡単にサービス展開地域と料金についてお伝えします。
- VOI
- サービス展開地域:ストックホルム市内、ウプサラ市内
- 料金:アンロックに10kr、1分1.5kr
- LIME
- サービス展開地域:ストックホルム市内、マルモ市内、Lund市内
- 料金:アンロックに10kr、1分3kr
肝心の料金は?
料金については、アンロックと分刻みの従量制料金と2つから成り立ちます。この「アンロック」は、電動キックスクーターを最初に乗り始める際に必要となる料金となります。通常電動キックスクーターは使われていない時は車輪がロックされており、このロックを解除するために10kr(日本円で125円)がかかります。
分刻みの料金については、スマートフォンのアプリで電動キックスクーターをアンロックした時からロックするまでの時間が課金対象となります。VOIの場合には、1分1.5kr(日本円で18円)ですから、10分で180円です。バスや電車など公共交通機関では行くには近すぎるけど、歩くにはちょっと遠い場所には最適な移動手段と言えるのではないでしょうか?
どこで借りれるの?
ここがこのビジネスのユニークな1つですが、各社の電動キックスクーターは基本的に物理的な店舗や特定の場所に置いてあるわけではなく、路上(歩道など)に置かれています。放置されていると言ってもいいでしょう。そのため、電動キックスクーターは、以前に使ったユーザが乗り捨てた場所にそのまま放置され、次に使われるのを待っている状態となります。
これがレンタルサイクルなどと大きな違いでしょう。特にレンタルサイクルの自転車はやはり自転車なので、設置場所などを確保しなければいけませんし、路上に放置するわけにはいきませんでした。それに対して、電動キックスクーターは、小さくコンパクトであるため、現時点で路上などに放置する形で事業が展開されています。ただ、これ歩道のいたるところに電動キックスクーターが放置されており、通行人や近くに住まわれている人にとっては迷惑な障害物であることには変わらないと思いました。
レンタル電動キックスクーターの使い方
さて、レンタル電動キックスクーターについての基礎知識はこの辺にして、実際に乗るまでの過程を説明したいと思います。
- その1まずはレンタル会社のスマートフォンアプリをダウンロードします。
- その2メールアドレス、もしくは電話番号によるユーザ登録を行います。
- その3利用料の支払いのため、クレジットカードを登録します。
- その4アプリ上に現在地の地図と使われていない電動キックスクーターが表示されるので、使いたい電動キックスクーターの2次元バーコードをスキャンしてアンロックします。
- その5地面を蹴って、アクセスオン!
残念ながら、上記のタイムラインに写真を一緒に貼ることができなかったので、上の流れの写真は以下の通りです。
- iPhoneユーザの方はApp Storeから「VOI」もしくは「LIME」で検索をしてください。
- VOIの画面です。ロックされている(使用されていない)電動キックスクーターの位置が地図上に表示されます。
- 特定の電動キックスクーターをクリックすると、その場所までの移動経路と電動キックスクーターの充電量が表示されます。
- 使用後にロックした際の画面です。20分利用して、41.5kr(日本円で520円)です。が、パッパは友達紹介などを駆使してVOI Creditを獲得していたので、今回は無料となりました。
ちなみに、パッパも実際に以下のルートで体験してみました。約2キロを15分ほどかけて疾走してみましたが、天気がよければとても気持ちがいい乗り物ではあることは保証します!ただ、運転しながら動画も撮ろうと思ったのですが、片手運転はかなり危険だと感じたので、お勧めはしません。
レンタル電動キックスクーターの素朴な疑問
ストックホルム市街に出ても大丈夫なの?
VOIもLIMEもスマートフォンのアプリ上の地図に使用可能な地域が示されており、基本的にはストックホルム市内でしか乗ることはできません。残念ながらパッパも試していませんが、各社の電動キックスクーターにはGPSが搭載されているため、もし自分が開発者なら使用可能な地域から離れたら何かしらかのアラームが作動するように設計すると思うので、基本的に各社のアプリ情報に沿って移動することをお勧めします。
盗まれちゃったりしないの?
これパッパもすぐに思いましたが、ロックされている状態の電動キックスクーターは車輪がまさに物理的にロックされており、押して動かすことはできません。
ならば、担いで持ち去ることができるのではとお思いでしょうが、パッパがロック状態でちょっとだけ位置を移動しようとしたら、アラームが鳴り始めたため、盗難対策もしっかりされているようです。よこしまな安易な思いで持ち帰ろうとしてもGPSで位置情報もしっかり管理されているでしょうし、正しくルールに従って利用しましょう。
充電が無くなった電動キックスクーターは誰が充電してるの?
どんなにバッテリーが高性能になっても、いつかは充電をしなければいけませんよね。そして、ストックホルム市内に散らばった電動キックスクーターを1台1台充電して回ることは非現実的であるため、VOIにしてもLIMEにしても、なんと電動キックスクーターの充電を一部の一般利用者にお願いするためのシステムがあります。
VOI HunterとLIME Juicer
VOIもLIMEもそれぞれ申請のあった一般利用者に対して、VOI HunterもしくはLIME Juicerとして、自社の電動キックスクーターを自宅に持ち帰り充電をしてもらう見返りとして、充電をしてくれたユーザに対してお金を支払っています。
VOIのホームページ上では、VOI Hunterとして電動キックスクーターを充電して路上に再設置することで、30krから最大で250krを稼ぐことができるとか。
日本であれば、色々な制約などにより難しくなる保守メンテナンスを、一般の利用者にお願いする点は、いかにも海外らしい発想であり、これにより電動キックスクーターを提供する会社は、いちいち点在する電動キックスクーターを点検したり、充電する必要がなくなり、きっとその分利用料金を下げることに貢献しているのでしょう。
レンタル電動キックスクーターの問題点
安全性
ストックホルムに展開するVOIとLIMEの両社は、ホームページやスマートフォン上でもヘルメットの着用を強く推奨してます。確かに安全上、時速20キロで走る電動キックスクーターから転倒した場合には、それなりの怪我を負う危険性があります。
そして、このヘルメット着用は各地域によって義務化されていたり、されていなかったりするのが現状であり、パッパが見る限りストックホルム市内で電動キックスクーターを利用する人がヘルメットをかぶっておらず、万が一重大な事故が起きた場合には、きっと大きな議論となるでしょう。
メンテナンス
電動キックスクーターの充電を一般利用者の助けを借りて行っているとはいえ、日々のメンテナンスは必須事項です。しかし、基本的に電動キックスクーターは路上に放置されている状態のため、酷く汚れていたり、歩行者の障害となる場所に放置されていることがしばしばあります。
電動キックスクーターの機能自体や位置情報は搭載されているセンサーやGPSで事業者がシステムから確認はできるものの、それ以外の汚れや物理的な故障、そして障害物となりはてた電動キックスクーターは逐次事業者により保守メンテナンスされてなければいけないでしょう。
写真の電動キックスクーターは、路上で駐輪する際のスタンドが壊れており、そのためビルの壁にもたれかかるようにして放置されていました。
教育
これ、ある意味最も重要なことですが、このレンタル電動キックスクーターの使い方であったり、最低限守らなければいけない教育が不足している場合があります。基本的には、電動キックスクーター自体、現在の展開地域の法律に当てはまらずに、一時的に禁止された事例もあり、新しく自由度の高い乗り物だからこそ、色々と物議をかもしだしています。
ストックホルムの場合には、事業者として電動キックスクーター自体は18歳以下は禁止されており、飲酒時の運転、2人乗りを禁じています。が、パッパは親が子供に電動キックスクーターを乗せている場面や、親と子の2人乗りをしているのも目撃しており、自由はいいことなのですが、必ずしもすべての人がルールを守っているわけではないところに、問題を感じました。
まとめ
スウェーデンのストックホルムに展開されるレンタル電動キックスクーターの記事、いかがでしたでしょうか?日本では、まだまだ個人の特殊な趣味の世界ですが、スウェーデンではすでにちょっとした買い物だったり、移動に使われる便利な乗り物として認知されつつあります。
そして、同時に自由だからこそ生まれる様々な問題を今後どう処理していくのかが興味のあるところでもあります。
最後までパッパのブログを読んでいただきありがとうございました。パッパのブログは以下のブログランキングに参加しております。誰かに読んでいただいているという実感と次の記事への執筆意欲となりますので、ぜひクリックをお願いいたします。
コメント